VOL.11『日本のいちばん長い夏』
今回の"旅"は・・・
65年前の夏、語られなかった終戦の真実を知る旅へ。
あなたにとって「戦争」ってなんでしょうか。 昔の話でしょうか? もう終わったことでしょうか? それとも…
この映画を見て、私は戦争に行った祖父のことを考えました。戦争で腕を撃たれて、一生片腕が不自由だった祖父。撃たれた片腕は最後まで骨と皮だけでしたが、心も体も骨太の自慢のおじいちゃんでした。
ポツポツと戦時下でのことを話してくれた記憶はありますが、今思えばあまり語りたくなかったこともあったのかもしれません。
日本中のすべての人間が例外なく巻き込まれた戦争。歴史の教科書には書かれていない真実がこの映画にあります。
1963年6月20日に東京の料亭「なだ万」で開かれた戦争の記憶を語る座談会の様子が『文芸春秋』8月号に掲載されました。その座談会には、当時の政権の中枢にいた政治家や官僚、知識人、主婦を含む28名の生存者が集められ、5時間に渡って一人一人がその記憶を吐露しました。
そこで語られるのは、ポツダム宣言に対する日本政府の対応、原爆投下、ソ連参戦、そして終戦へと至る出来事…。司会は原作者でもあり、当時33歳文藝春秋社員であった半藤一利氏でした。その座談会を映像で再現したのが『日本のいちばん長い夏』です。
この映画は、三つの視点から語られるのも特徴です。
一つ目は、座談会の当事者たちの視点。
二つ目は、主人公として登場する木場勝己演じる、テレビ番組の演出家の視点。
三つ目は、座談会の人々を演じる俳優やジャーナリスト、弁護士など本人の視点。
戦時下と今を繋ぐように当事者を演じる現代の文化人達、 さらにキャストである文化人達が演技ではなく本人の戦争観も舞台裏で語る、というのは今まであまりなかった手法ではないでしょうか。
主人公も座談会の参加者も、実在の人物をモデルにしていますから、時を経て語る人は変われども、言葉だけは忠実にそのまま伝えられているように感じまし。かつ現在の時間軸で語る人達がいるので、ぐっと65年の距離を縮めているのです。
「今、この日を思い起こすのは、今度の戦争で死んだ310万人以上の同胞のことを忘れないためなのであります」半藤一利
「率直に言って、ポツダム宣言というものを全然予期していませんでした。いわば、寝耳に水…」迫水久常
「軍についていったお友達は、ほとんど全員が死んでしまいました。もう弾丸なんか怖くありませんでしたが、さすがに寂しくなって、二人で抱き合って泣いてばかりいました」楠政子
「あの夏」と「今」は、確かに繋がっています。これから歴史を繋いでいく私たちに、当時の人たちの絞り出した声が宝物のように響いて来ます。
1945年8月6日広島に原子爆弾投下、2010年8月7日『日本のいちばん長い夏』公開。

~『日本のいちばん長い夏』~
○STORY
あるテレビ番組の演出家が1963年に行われた座談会を再現しようとしていた。彼は文化知識人を一挙に集結させ、彼らを俳優として起用するという文士劇スタイルをもって当時の模様を再現しようと試みる。さらに彼は原作者である半藤氏や、集まった文化人達個々にも撮影の合間を縫って取材し、それぞれの戦争観などを聞いていく。
時の日本政府が慎重に対処していれば、広島と長崎の惨劇を免れることができたのか? ソ連の参戦を阻止できたのか? なぜできなかったのか? 28人それぞれの発言の数々は、そうした謎に応えていく。
○INFO
監督・脚本:倉内均『佐賀のがばいばあちゃん』
原作:半藤一利『日本のいちばん長い夏』
制作・著作:NHK/アマゾンラテルナ
出演:木場勝己/池内万作/キムラ緑子/湯浅卓(国際弁護士)/中村伊知哉(慶應義塾大学教授)/青島健太(スポーツライター)/
山本益博(料理研究家)/松平定知(アナウンサー)/富野由悠季(アニメ映画監督)/林望(作家)/鳥越俊太郎(ジャーナリスト)/立川らく朝(医師・落語家)/島田雅彦(小説家)/田原総一郎(ジャーナリスト)/市川達也(漫画家)/ディヴィッド・ディヒーリ(ジャーナリスト)
配給:アマゾンラテルナ
上映時間:1時間51分
8月7日ロードショー全国公開
※2010年7月時点の情報です








TV番組で映画コーナーを担当して以来、映画のとりこに。ハリウッドスターへのインタビューも多数。






