
岩手県遠野市「あんべ」
ジンギスカン定食 1000円~1400円

その三 ~遠野名物はジンギスカンなのだ~
のどかな地平にやわらかな山々の稜線を望む遠野郷。
柳田國男の『遠野物語』が世に知られるようになって以来、民話の里として有名になった地である。が、B級グルメー、いやB級グルマーか? B級グルメ好きの間では、むしろジンギスカンの里として知られる地域なのである。
その遠野で50年以上続くジンギスカンの専門店が「あんべ」。シンプルな白暖簾に染め抜かれた「じんぎすかん」の文字が、B級グルメ度を高めている。
ここで注文するのはジンギスカン定食。
あんべのジンギスカン定食には、4種の肉が用意されている。リーズナブルなメニューから順に紹介すると、マトンモモ、ラムカタ、ラムモモ、ラムカタロース。私的におすすめなのは、いちばん安いマトンモモといちばん高いラムカタロース。マトンモモは羊肉らしい濃厚な旨味にあふれていて「あぁ、オレ肉食ってるなあ」という快楽にひたれる一品である。ラムカタロースは、やわらかく適度な刺しが入った上品な肉で「あぁ、私お肉食べてるのね」という至福が味わえる一品。せっかく遠野まで行くのである。ぜひとも両方味わいたいところ。
ジンギスカンを食べる上で肝心なのはその焼き方である。
鉄兜のような半円形をなした鍋の天頂部分に脂を載せ、鍋全体をしっとりとさせる。頃合いを見て縁に野菜を載せてから、空いたスペースでおもむろに肉を焼くのが王道だ。
厚切りのやわらかな羊肉を、南部鉄器の特製鍋で焼いた場合、あまり早くひっくり返そうとすると、肉が鍋にくっついて離れないという事態に陥る。そんな光景を常連客に目撃された場合は「あらあら、あちらさん大変ねぇ」と失笑されること必至である。
そんな恥をかかないためには、肉の縁が焼き色に変わってきた頃に、ビシっと手慣れた手つきでひっくり返すようにすることだ。また片面をじっくり焼けば、裏はほんの少し焼くだけで十分。焼き過ぎてはせっかくの上質な羊肉がだいなしになる。ほどよく焼けた肉を素早く醤油ベースの秘伝のたれにつけ、後は口へ一直線。厚切りの肉は、なんとも艶めかしい味わいで、そのぷりぷりの食感がたまらないのだ。
……今宵もすばらしきB級グルメに乾杯!



















