
宮城県仙台市「上海王飯店」
酢豚 700円

その六 ~黒酢と豚がこんなにも仲がよいとは…~
寒さ増す東北の12月、なぜかこの頃になると「肉恋し」という心境になるのは私だけだろうか。普段からよく肉を食べてはいるが、この時期は更に肉を欲してしまう。食べ物においては、完全に「肉食系」男子なのである。そんな肉々しい気分の時に足を運びたいのが「上海王飯店」。中国人女将が腕を振るう小食堂は、そのまんまチャイナタウンの風情(それもややディープめな)。近くに大学があるからか、メニューは定食を中心にいずれもリーズナブルな設定というのも、不景気風吹く昨今では嬉しいところだ。
数多くあるメニューの中から、まず味わってもらいたいのが酢豚だ。酢豚というと普通、豚肉の唐揚げに玉ネギやピーマンなどの野菜類を合わせたもの、というイメージであるが、上海王飯店の酢豚は豚肉だけ。野菜一切なし。最初に見た時は、真っ黒な肉のかたまりがゴロッと無防備に皿に盛られているようにしか見えなかった。
そして、いざ食べる段になると「香醋(こうず)」とも呼ばれる、黒酢の芳醇な香りが鼻腔をくすぐる。実は私、酸っぱい食べものはあまり得意ではなく、正直、この酢豚の時もやや食べるのを躊躇したものであった。が、思い切って肉のかたまりをひとつ頬張ってみると、しっかりとした豚肉の食感と、クセのある黒酢の香ばしさが絶妙にマッチしていて、噛むごとに、そのおいしさに魅了されていったのである。しかも黒々とした見た目と裏腹に、あまりしつこさを感じないのである。食べやすいのだ。また余談だが、香ばしい味付けは白いご飯との相性もこれ以上ないくらいによい。
しかしなぜ、この酢豚には肉のほかに何も入っていないのか、疑問に思って女将に訊いてみると「中国では、こういう風につくっていたから」と、間髪を入れずに明快な答え。常連客からは「せめて玉ネギくらい入れたら」と言われたこともあったそうだが、この豚肉&黒酢の組み合わせのおいしさを大切にしたいと、開店以来、ずっと変わらずに続いている。今では、上海王飯店の外せない定番メニューのひとつ。たっぷりの豚肉とたっぷりの黒酢、ひとクセもふたクセもある味だが、一度口へ運ぶと忘れられない料理となる酢豚。寒い冬にチャイナタウン風情の中華料理店でとことん味わってみるのも、また一興である。
……今宵もすばらしきB級グルメに乾杯!



















