

『朗読者』
ベルンハルト・シュリンク 著/
松永美穂 訳
新潮社刊
駆け引きのない物語だから感動するし、
やるせない
ケイト・ウィンスレットが本年度アカデミー賞主演女優賞を受賞した映画『愛を読むひと』の原作。15歳の「ぼく」は、母親ほど年齢の離れた女性・ハ
ンナに恋をし、二人は愛し合う。ハンナは「ぼく」に、物語を朗読してほしいと頼み、やがてそれがふたりの日課となった。しかし、ある日突然ハンナは失踪してしまう。「ぼく」は空虚感と、彼女がなぜ居なくなったのかという大きな疑問を抱えたまま成長する。そしてハンナと思いがけず再会した場所は、ナチス裁判の法廷だった。
物語は第二部以降、みずみずしく胸に迫る恋愛描写から一転します。ドイツの人々が内側から見た戦争犯罪と、それを個人に置き換えた心理、葛藤。そして、誰も知ることのなかったハンナの秘密とは?
決して共感を求めるのでもなく、涙を誘いたいのでもない物語だからこそ感動するし、やるせない気持ちになります。
「なぜだろう?どうして、かつてはすばらしかったできごとが、そこに醜い真実が隠されていたというだけで、回想の中でもずたずたにされてしまうのだろう?」。
読み終えたあと、読者は「ぼく」と同じ気持ちになってこの物語を振り返るのではないでしょうか。
作者はドイツ出身で、現役の大学教授。この作品により世界に名を知られるベストセラー作家になりました。他の作品もぜひ読んでみたい、と思わせる作家です。

















