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村上春樹 1Q84

村上春樹 1Q84『世界の
 すべての七月』
 ティム・オブライエン著 /
        村上春樹 訳 / 文春文庫

すべてのひとにある人生の「七月」

 「31年前、1969年の荒々しい春、彼らは時代に浮揚されて、自分たちの力量以上に生きていた。そこには善と悪とがあり、モラルの発熱があった。しかし今は西暦2000年で、新たなミレニアム、穏や

かな世間、色あせてしまった希望、大金持ちになった半端なやつら。」

 2000年の7月7日、1年遅れで開催された「1969年度卒業生」による30回目の同窓会。大学時代をともに過ごした仲間たちはすでに50代、壮年を迎えていた。結婚した者、離婚した者、癌を患った者、戦争で片脚を失った者、徴兵を忌避して国外へ移住した者、殺された者・・・。1960年代という激動の時代を生きた人々の「記憶」と「その後」を描いた長編小説である。

 物語は、ダートン・ホール大学体育館での同窓会シーンの章と、主な登場人物それぞれのエピソードの章とが交互に展開する。人生の辛酸を味わい尽くした同年代の男女が交わす会話は、重みがあり、リアルで、時に息苦しくもなる。しかしそれをすらすらと読ませるリズムの良さやユーモアがこの作家の魅力だ。

 「1969年の、あのどたばたした理想主義と幻想」。ベトナム戦争、学生運動のさなかに青春時代を過ごし、その後の虚無感を共有する者どうしのシンパシーが、物語の根底にはある。

 「荒涼とした、燃え立つような草原のなかにあっては、世界はいつもすべて七月だった。」


 『July,July』という原題がついたこの小説。シーズナブルなタイトルに惹かれて手に取ったが、読み終えてはじめて、期待していた季節感などまったくなかったことに気が付いた。しかし、彼らにとっての「1969年」のように、人はそれぞれに人生の「七月」を持っていて、その後の生活に大きな影響を与えるのかもしれない。

 著者のティム・オブライエンは、アメリカの現代作家。1946年ミネソタ州生まれで、1969年からの約1年間、ベトナム戦争に従軍した経歴を持っている。そして訳者の村上春樹氏もまた、ほぼ同年代である。彼らにとっての「七月」もまた、1960年代なのかもしれない。



本は旅。解説

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