
vol.11『夏服を着た女たち』
アーウィン・ショー著/
常盤 新平 訳
講談社文庫 刊
粋な会話で紡がれる、 爽やかでほろ苦い短編集
「僕はニューヨーク市のことを考えると、女の子がみんな街をねり歩いている光景を想像する。ユダヤ人やイタリア人、アイルランド人、ポーランド人、中国人、ドイツ人、黒人、スペイン人、ロシア人の女の子さ。(中略)フットボールの試合を見にくる、ほっぺを赤くした若い女たち。そして、陽気がよくなると、夏服を着た女たち。」
気持ちのいい日曜の朝、ニューヨーク五番街で仲良く散歩をする若い夫婦。しかし、ふいに妻が「あなたはよその女性ばかり見る」と夫を咎め
立てたことで、上機嫌に過ごせるはずだった一日に、急に暗雲が立ち込めはじめる・・・。
著者の代表作で本書の表題作でもある『夏服を着た女たち』を含む10篇が収録された短編集。登場人物の会話を中心にストーリーが展開し、その小気味良いスピード感と魅力的なフレーズが、読者を物語に引き込んでいく。
『フランス風に』という一篇では、恋人の女性が結婚を要求してくるのを避けたいと感じていた男性が、二ヶ月間街をあけて戻ると、彼女はすでにほかの男性と婚約していた・・・という滑稽で切ない物語だが、再会後に交わされる会話がとても印象的だ。どこかよそよそしい態度を取る彼女に向かって、「二ヶ月は長すぎたかな? パリでは」と問う彼に、彼女は「長すぎないわ。パリだって、よその街だって」と答える。この一言で、彼女は二人の関係が完全に終わったことを告げるのだ。
このように、こなれた男女の会話が物語の随所でエッセンスとなり、映画のように視覚的な、忘れがたいシーンを脳裏に焼き付ける。そして10篇すべての物語の根底にある、愁いやセンチメント、悔恨、哀しみは、そうした瑞々しい会話を通して昇華され、爽やかな読後感を呼び起こす。
本書の著者はニューヨーク生まれの作家アーウィン・ショー。1984年に71歳で亡くなっている。この作品は1930年代に書かれたものだが、時間の経過をまったく感じさせない力強さと、澄んだ風のような清々しさがある。夏の読書に最適の一冊だ。
【2010.07】












