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宮城県気仙沼にある「石渡商店」は、創業から60年以上、フカヒレ加工を専門としてきた。しかし、世界三大漁場の三陸沖を目の前にした気仙沼では、フカヒレ以外にも、カツオやマグロ、サンマ、カキなどたくさんの海産物が採れる。そうした気仙沼食材を使って地域に貢献する商品ができないか、そんな思いから生まれたのが「気仙沼完熟牡蠣のオイスターソース」だ。これが国内外で大人気商品となり、遂には、このオイスターソースを使い2021年7月に販売開始となったのが「牡蠣油麺」。今回は自作&実食レポートを紹介する。
味のベースとなる「気仙沼完熟牡蠣のオイスターソース」は、気仙沼の北東、リアス式の海岸が入り組んだ唐桑半島の良質なカキを使っている。しかも一般的に知られる冬のカキではなく、4月から5月下旬に採れる産卵前の栄養をたっぷり蓄えたクリーミーなカキを使うところがポイントだ。これこそまさに「完熟」した旨味が詰まったカキで、石渡商店のオイスターソースは、完熟カキのみを使用している。
もともと「石渡商店」のオイスターソースは、玉子かけご飯や油脂との相性がよかった。そこに目をつけ、作られたのがこの「牡蠣油麺」。そこには長年、気仙沼においてフカヒレ加工に真面目に取り組み続けた「石渡商店」の姿勢が反映されていて、素材の良さ、旨さがストレートに伝わってくる商品に仕上がっている。
麺にも思考錯誤のあとがうかがえる。乾麺ではあるものの、茹でていくうちに生麺にも似たしっとり感が出てくる平打太麺。パスタにも使われる弾力性に富んだデュラム小麦を使っていて、独特のシコシコ感が出るように計算されている。油麺、油そばなどいわゆるラーメン店で出される「汁なし系」のメニューは、そのタレもさることながら麺が重要視される。
なぜなら味の決め手はタレであるものの、実際に食べた時の「食感」は、ほぼ麺が演出することになる。スープのない汁なし系では、実はこの食感こそが、食べ手の評価に直結することが多いのだ。そういう意味で、牡蠣油麺に使われたパスタにも似た乾麺の食感は、汁なし系の定義をよく研究し生まれた麺と言える。
完成したら、皿に盛り付けとなる。1箱(1食分)には、麺のほか、タレのオイスターソース、ごま油、おろしニンニク、すりごまが付いている。これに、生卵、ネギくらいは自前でトッピングしたいところだ。生卵とオイスターソースとの相性がよく、全体のバランスも整えてくれる。タレが濃厚なこともあり、味のインパクトは強いが、ベースがカキの旨味なので、決してしつこくなく、むしろ油麺にはこのくらいの濃厚さが必要であろう。「うまい!」と思わずつぶやきつつ、一気に1食分を完食してしまう。タレがコクウマなので「追い飯」もおすすめである。
気軽に自宅で調理できる牡蠣油麺は、自分好みのトッピングを楽しめるのもいいところだ。この個性的なうまさを多くの人に自宅で味わってもらいたい。
2021年9月時点での情報です。