仙台 |「FLAT WHITE COFFEE FACTORY」代表・中澤美貴さんインタビュー(前編)一杯のコーヒーで東北を元気にしたい

    仙台市郊外に建つコーヒーロースター「FLAT WHITE COFFEE FACTORY(フラットホワイトコーヒーファクトリー)」。“本物を届ける”というコンセプトのもと、生産者と直接交渉してセレクトした、高品質のコーヒー豆を取りそろえています。

    この店の共同代表兼バリスタとしてホールに立つのが、通称“ミッキー”こと、中澤美貴(なかざわよしたか)さん。中澤さんがコーヒーと出会い、日本とニュージーランドで経験したバリスタとしての生活や、「FLAT WHITE COFFEE FACTORY」がこれから目指していることなどをお伺いしました。

    銀行員からバリスタへの転身

    山梨県で生まれ、千葉県松戸市で青春時代を過ごした中澤さん。その後大学を卒業し、1989年大手都市銀行に入行。営業マンとしてハードワークをこなし、7年間勤務したのち、会社の同期と事業を立ち上げるために退職します。

    昔からコーヒーが好きだった中澤さんですが、最初はコーヒーをビジネスとしては考えていなかったそう。しかし、「自分の人生を賭けるなら、やっぱり“好きなもの”にしたい」と確信した中澤さんは、ビジネスパートナーとアメリカのコーヒーチェーン「タリーズコーヒー」の日本での経営権を契約します。

    飲食業界で働いた経験のなかった中澤さんは、「タリーズコーヒー」をオープンさせるにあたり、「スターバックスコーヒー」でアルバイトを始めます。アメリカ・シアトル発祥の「スターバックスコーヒー」は、1996年に日本に進出後、エスプレッソをアレンジしたドリンクが話題になっていました。

    銀行員時代、「スターバックスコーヒー」の銀座1号店近くで働いていた中澤さんは、そのブームを目の当たりにし、衝撃を受けたそう。「あのスマッシュヒットはすごかった。これはマスコミが作り上げたブームなのか、本当にお客さんが求めているのかを実感したかった」と話します。

    中澤さんのバリスタとしての人生はここから始まりました。「スターバックスコーヒー」では無我夢中で業務を覚え、「タリーズコーヒー」でその技術を生かします。「タリーズコーヒー」を退社後は、「ドトールコーヒー」でも経験を積み、着実にバリスタとしての実力を身に付けていきました。

    もうひとつの故郷・ニュージーランドでの生活

    「タリーズコーヒー」とのビジネス経験から、英語の必要性を感じていた中澤さん。30歳で一念発起し、ワーキングホリデーでニュージーランドへ渡ります。

    「英語を勉強するために行ったから、コーヒーのことはまったく考えていなかった」とはいえ、コーヒーが好きな中澤さんは、語学学校の帰りには必ずカフェを訪れ、コーヒーの飲み比べをしたそうです。

    2ヶ月で語学学校を卒業すると、今までのバリスタ経験を生かし、よく通っていた「SIERRA COFFEE(シエラコーヒー)」というカフェで週に1回働き始めます。

    そこで問題になったのが、言葉でした。2ヶ月の滞在期間では、スタッフや客との会話はほとんどできません。ただ、そのまま黙っていては英語は身に付かないと考え、カフェのオーナーに直談判します。ご飯を食べさせてもらう代わりに皿洗いをすることを志願し、バリスタとして勤務していない日も毎日カフェに通う許可をもらったのです。そこで、スタッフなどと会話する時間を増やし、生きた英語をどんどん吸収しました。

    「完璧ではない英語を話すのを日本人は嫌がるけれど、僕はあまり気にしなかった。そこにはやっぱり覚悟があったから」

    そうやって自分のものにした英語力を生かし、ニュージーランドで日本食レストランや不動産業を経営。気が付けば14年間生活していました。

    震災で生まれた想いからできたカフェ

    2010年、ニュージーランドで生活していた中澤さんに、語学学校の友人で福島県出身の小松さんからカフェのプロデュースを依頼されます。福島市にある「Cafe & Bakery KeriKeri」の立ち上げを成功させ、ニュージーランドへ戻って生活していたところに、東日本大震災のニュースが飛び込んできます。中澤さんは、被災した小松さんたちを助けたいと再び福島へ向かいます。

    「被害は大きかったものの、実際に訪れてみたら皆さん力強く生活していた。ここで僕ができる手助けをもっとしたいとな、って」

    そう強く思った中澤さんは“コーヒーで東北を元気にしたい!”と考えます。 そこで、小松さんと東北の中心地・仙台でカフェをオープンさせようと動き出し、2013年に「FLAT WHITE COFFEE FACTORY」が生まれました。

    カフェの店内は、天井が高く開放的な空間に大きな焙煎機が備えられています。店名にもなっているニュージーランドやオーストラリアの代表的なエスプレッソドリンク「フラットホワイト」が味わえます。フードやスイーツは、中澤さんが修行時代に覚えたメニューです。

    仙台にそれまでなかったニュージーランドスタイルのカフェはたちまち話題になり、今では仙台のカフェシーンになくてはならない店のひとつとなっています。

    ~後編に続きます~
    http://www.shoepress.com/topics/04_0010.html

    中澤美貴(なかざわよしたか)さん
    1967年山梨県甲府市生まれ。1989年に三和銀行(現:三菱東京UFJ銀行)に入行。1996年に退社後、独立し1997年「タリーズコーヒー」の日本進出に携わる。その後、退社しニュージーランドに渡る。2010年に福島県福島市の「Cafe&Bakery KeriKeri(カフェアンドベーカリーケリケリ)」をプロデュース、2013年仙台市泉区に「FLAT WHITE COFFEE FACTORY(フラットホワイトコーヒーファクトリー)」、2015年仙台市青葉区に「ダウンタウン店」、2016年福島県三春町に「三春店」をオープンし、現在に至る。

    2017年7月時点での情報です。

    FLAT WHITE COFFEE FACTORY(フラットホワイトコーヒーファクトリー)
    所在地:宮城県仙台市泉区高森6-8-8
    電話:022-341-3452
    営業時間:10:00~19:00(土・日曜、祝日は9:00~)
    定休⽇:不定休(月2回)
    HP:こちらをクリック

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